将棋の封じ手とは何のこと⁉その意味や有利・不利についても解説

将棋のタイトル戦などで時々耳にする言葉に『封じ手』があります。

この封じ手は、文字通り自分の手を封じておくこと意味しています。

どういうことかと言うと、2日制のタイトル戦で、1日目の最後となる手は指すのではなく、駒の動きだけ紙に記して保管しておき、翌日にその紙通り1手目を指すということなんです。

なかなかイメージしにくいと思うので丁寧に解説していきますね。

将棋の封じ手とは

そもそも封じ手は持ち時間が8時間を超える対局でしか行われません。

それぞれの持ち時間が8時間もあると、2人で合計16時間。食事休憩なども合わせると20時間近くなってしまい、1日で行うのは現実的ではありません。

そこで対局日を2日に分けて行うのですが、問題は1日目の最後の手をどうするか。

手番の人が指してから、1日目が終了してしまっては、次の人は翌朝まで考えられるのでずるいですよね。

時間があればたくさんのことを慎重に考えられますし、自分の持ち時間も減らないのだから有利・不利も出てきてしまいます。

そうした不公平感を少しでもなくすために封じ手は生まれました。

封じ手は指し手を紙に書いて保管する

1日目の終わり方は、手番の棋士が次の手を紙に記し、封をして保管します。

つまり、2日目の初手を1日目に決めておくのです。

このようにすることで、次指す手が何かわからない状態で考えるしかありません。

封じ手は厳重に保管される

封じ手は1日目の規定の時間を過ぎると行われます。

ほとんどの場合、18時を過ぎて手番の棋士が封じ手をすることになります。

封じ手の手順は、

①立会人に封じる旨の意思表示をする

②記録係が2通の封じ手用紙に対局者の名前を書き、その紙に封じ手を書く

③紙を封筒に入れ、封じ手が問題なく行われていれば、両対局者が封筒裏にサインをする

④封筒の表に立会人が棋戦名などを記載する

⑤封筒は1通は金庫に、もう1通は立会人が保管する

という過程を踏まれます。

誰にも読まれないように適切な過程を経て保管されるわけです。

2日目は封じ手の手順から始まる

対局2日目の様子を紹介します。

初日同様、対局開始前までに駒を並べるのですが、記録係が前日の棋譜を読み上げ封じ手の手前まで駒を並べます。

対局開始時間になると、立会人が封じ手を開封し、読み上げるのでその通り指し対局が再開となります。

封じ手は前日に決めてしまうわけですから、2日目までに手を変えたいと思っても変えられない。胃が痛くなるよな時間が続きそうですよね。

封じ手が行われる棋戦

封じ手が行われるのは現在タイトル戦のみとなっています。

そのタイトル戦の中でも、

  • 竜王戦
  • 順位戦
  • 王位戦
  • 王将戦

の4つの棋戦のみ封じ手が行われます。

どれも8時間を超える長い持ち時間のタイトル戦です。

封じ手の有利・不利を考える

封じ手が行われる前は、2日目にはじめに指せる対局者が明らかに有利でした。

それもそのはず、1日目終了時から2日目が始まるまで、持ち時間を消費しないで考えられるのですから。

リフレッシュさせた頭でじっくり考えた結果、最善と思う手を指せるのは大きなアドバンテージでした。

これでは明らかに不公平ですよね。

それでは封じ手ではどうでしょうか。

封じ手側が不利⁉

最近はコンピュータの進化もあり、次の一手はおおよそ見当がつくようになっています(とはいっても難しいですが)。

そうした状況で、相手も予想が立てやすく次の一手を考えやすくなります。つまり対策しやすくなるのです。

そして封じ手を決める時も持ち時間が減ってしまい、焦りながら考える必要があります。

持ち時間を気にしながら考えた一手を封じ手として封じておくのは精神的にもこたえそうですよね。

夜、「もっといい手があった」とひらめいてしまったときにはもう遅いわけですから。

封じ手側が有利⁉

タイトルを何期も獲得している渡辺明棋士は明言をしています。それは封じ手側が有利と。

その理由は、次の一手を知っているのは封じ手側しかいないからと言っています。

たしかに次の一手を確実に知っているのは封じ手者しかいませんし、予想ができるからと言ってその予想が当たるとは限りません。

結局のところ、封じ手された方はいろいろなパターンを想定して研究するしかないのです。

対照的に封じ手側は一手先を知っているわけですから、そこから研究することができるため濃い研究ができるわけです。

封じ手者が一手先をすでに知っているということは、たくさんのことを考える将棋においてはアドバンテージになるはずです。

封じ手には有利・不利はどちらもある

上でどちら側からも検討しましたが、封じ手による有利不利はどちらにもあると思います。

どちらにもメリット・デメリットはありますし、棋士によって、封じ手する方が良いか悪いかはわかれるはずです。

棋士も自分のやりやすいように対局の中で駆け引きをしています。

そうした中で封じ手によって明らかに結果に差が出ることはないのかと。

封じ手の出現により、2日制のタイトル戦でも差が出にくくなっているのはとてもいいことですよね。

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